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雉は、キジ目キジ科キジ属に分類される鳥で、日本の国鳥です。昔話の『桃太郎』で鬼退治の仲間として猿や犬と共に登場し、『万葉集』や『徒然草』など古典の和歌・随筆集でも詠まれている、古くから日本人との関わりが深い鳥です。
昔話の「桃太郎」に登場するキジ
雉は尾の長いことが特徴で、通常、オスは全長80センチ、メスは全長60センチ程度で、鶏大の鳥です。日本では、本州・四国・九州に分布しています。オスは体が濃い緑色で、背に褐色の斑がある濃い茶色の部分があり、翼と尾羽は茶色です。繁殖期になると、ハート型の赤い顔になり、「ケーンケーン」という鳴き声を上げてメスを求めます。鮮やかな色を持つオスと対照的に、メスは全体的に茶色で地味な色合いをしています。
ハート型の赤い顔をしたオスのキジ
雉は定期的に長い距離を移動する渡り鳥ではなく、定住する留鳥です。通常、山地から平地の林、河川敷、農耕地域などの明るい草地に生息しており、主に植物性のものや昆虫などを食べます。飛ぶのは苦手ですが、走るのは速いです。繁殖期は4月から7月頃で、地上に窪みを作って巣とします。通常、6-12個の卵を産みますが、子育てはメスだけが行います。非繁殖期には雌雄別々に行動します。人間にはできない地震の初期微動を知覚できるため、「朝キジが鳴けば雨、地震が近づけば大声で鳴く」とあたかも予知能力を備えているように言われることがあります。
メスのキジ
雉は1947年3月22日に国鳥として選ばれましたが、選定理由には、「メスは母性愛が強い」ことや「狩猟対象として最適で、肉が美味」などがあります。すなわち、国鳥に選ばれていながら、狩猟が許されているという、何とも哀れな鳥です。狩猟時期は11月中旬から12月中頃までとなります。雉は少なくとも平安時代から料理の食材として使用されており、雉鍋、雉飯、雉そばなどの伝統的な調理法があります。鶏肉に比べ、低脂肪、高タンパクでカロリーも低いです。
キジの雛
雉が高貴な鳥として認められている証拠に、1984年に発行された日本の一万円紙幣D号券の裏面にオスとメスの雉が描かれていることが挙げられます。また、雉に由来している諺もあります。例えば、「頭隠して尻隠さず」は、欠点の一部しか隠していないのに全部を隠したつもりでいる愚かさを嘲る言葉ですが、草むらに隠れたつもりになった雉の様子に由来しているそうです。「雉も鳴かずば撃たれまい」は、雉は鳴かなければ居場所を知られず撃たれることもなかったのにという意味から、余計なことを言ったばかりに自ら災いを招いてしまうことのたとえです。
雪の上を歩くメスのキジ
日本では毎年、5月10日から16日までの愛鳥週間や狩猟期間前などの時期になると、大量の養殖雉が放鳥されます。養殖雉のほとんどが動物やワシ類などに捕食されるらしく、これは放鳥場所に適切な生息環境が整っていないのが原因のようです。古くから親しまれてきた雉はこれからも末長く人間と共存していくことを願います。