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祝祭日のうち、日本人にとって最も重要な意味を持つのはお正月だと言えます。お正月は本来、歳神様を迎えるための祝賀行事で、神様に捧げる供物として、古くからおせち料理という伝統的な正月料理を用意する習慣がありました。また、神様を迎える時期に火を使う炊事は避けるべき、お正月ぐらい女性を家事から解放させたいといった理由から、日持ちのするおせち料理をあらかじめ準備するようになったという説もあります。
重箱に入ったおせち料理
おせち料理を構成するのは、黒豆や数の子、田作りまたはたたきごぼうなどを含む祝い肴、酢の物、焼き物及び煮物です。おせち料理に使う具材の種類は地域によって異なりますが、およそ20〜30種類が一般的です。具材には、それぞれ縁起の良い意味や願いが込められています。例えば、黒豆は甘く煮たものですが、まめに健康に過ごせるように願う一品です。数の子はニシンの卵で、卵の数が多いことから、子宝や子孫繁栄の意味を持っています。
子孫繁栄の意味を持つ数の子
栗の甘露煮やさつまいもで作る栗きんとんは「金団」という漢字が当てられることから、金銀財宝を連想させます。他におせち料理の定番として伊達巻がありますが、卵とはんぺんで作る卵焼きのことです。形が巻物に似ていることから、学問成就を象徴する意味があります。近年、日本人の食生活は外国からの影響で多様化し、おせち料理も人々の嗜好に合わせて、種類が増えてきました。高級料亭がプロデュースしたものや、洋風や中華風のものなどバラエティに富んだおせちが入手できるようになっています。
卵とはんぺんで作る伊達巻
おせち料理は重箱に美しく詰められ、華やかでおめでたい印象を与えます。重箱は重ねられる方形の漆塗りの容器で、本来、五段が主流でしたが、現代では、一人で食べる「お一人様おせち」という簡素化されたものも登場しています。重箱の一番上の段は初の重と言い、お正月らしい祝い肴が入ります。隙間ができないように、紅白かまぼこや、昆布巻き、栗きんとんなど色々な種類の縁起物が詰められます。
重箱は重ねられる方形の容器
ニの重は、えびや鯛などの海の幸を焼いた焼き物が入るのと対照的に、三の重は煮物が中心で、れんこんや里芋、ごぼうなどを一緒に煮た筑前煮などの山の幸が詰められます。四の重には、日持ちのする酢物や箸休めになるような料理を入れます。五の重は、昔から歳神様から授かる福を詰める場所だとされており、あえて空の状態にしておくのが慣習です。多忙な現代社会のニーズに応え、おせち料理は家庭で作る以外に、百貨店や通販の店舗からも買い求められるようになっています。
食卓に並んだおせち料理
具材の種類からお重の詰め方まで、様々な伝統が受け継がれているおせち料理ですが、普段あまり家族と一緒に過ごす機会がない人にとって一番大切なのは、家族全員で楽しくおせちを作ったり食べたりする団欒の時間ではないでしょうか。
★ おせち料理を用意してみる?